現代語訳 論語と算盤【渋沢栄一】 / レビュー・感想

 

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こんな人におすすめ

  • 渋沢栄一について知りたい
  • 地に足ついたビジネス思想について学びたい

 

本の情報

  • 現代語訳 論語と算盤
  • 2014/1/10 発売
  • 渋沢栄一 (著), 守屋淳 (翻訳)

 

概要

本書は以下の10章構成で渋沢栄一が論語を引き合いに商人としての心得を説いた、論語と算盤を現代語訳した本である。

  1. 立志と学問
  2. 常識と習慣
  3. 仁義と富貴
  4. 理想と迷信
  5. 人格と修養
  6. 算盤と権利
  7. 実業と士道
  8. 教育と情誼
  9. 成敗と運命

次の新一万円札の顔となることで話題になっている渋沢栄一は、どんな人物でどんな考えや価値観を持っているのか知ることができる。

また本書のタイトルである論語と算盤は、道徳と商売として正反対のものとして語られがちだが、渋沢栄一は小さい頃から論語の教えに傾倒し、ビジネスの才能を発揮してきた経験から金儲けと社会貢献の均衡を図る知恵を惜しみなく書かれている。

ビジネスだけでなく生きる上での人生の指針となる格言が多々あり、一回読んで終わりでなく定期的に読み返していきたい本である。

 

【引用】個人的に気になったポイント

つまり、喜怒哀楽はバランスをとる必要があるというのだ。わたしも酒は飲むし、遊びもするが、常に「走りすぎず、溺れすぎず」を限度と心得ている。

 

「名声とは、常に困難でいきづまった日々の苦闘のなかから生まれてくる。失敗とは、得意になっている時期にその原因が生まれる」

 

志を立てる要は、よくおのれを知り、身のほどを考え、それに応じてふさわしい方針を決定する以外にないのである。誰もがその塩梅を計って進むように心がけるならば、人生の行路において、問題の起こるはずは万に一つもないと信じている。

 

すべての人に、勉強を続けることを希望するのと同時に、生活のなかから学ぶ心がけを失わないよう心掛けて欲しいと思うのである。

 

要約すれば、どんな仕事にもかかわらず、商売には絶えざる自己開発が必要なのだ。また、気配りも続けなければならない。進歩はあくまでしていかなければならないが、それと同時に悪意の競争をしてはならないことを、強く心に留めておかなければならない。

 

「仕事とは、地道に努力していけば精通していくものだが、気を緩めると荒れてしまう」

 

天からくだされる運命とは、人間がこれを意識しようがしまいが、四季が自然にめぐっていくようにすべての物事に降り注いでいることを、まず人は悟らなければならない。そのうえで、この運命に対して、「恭」――礼儀正しくする「敬」――うやまう「信」――信頼するという三つの態度で臨むべきなのだ。そう信じてさえいれば「人事を尽くして天命を待つ」――自分ができることをすべてしたうえで、天からくだされる運命を待つ、という言葉に含まれる本当の意義が、初めて完全に理解されるようになると思う。

 

本書から得た気づき

渋沢栄一の一生

渋沢栄一は埼玉県深谷市の農家で生まれ、小さい頃から論語の教えに傾倒していた。また、子供の頃から家の商売として藍の買い付けを行い、早くからビジネスの才能を発揮していた。21になると江戸に出て勤皇志士と交流し、尊王攘夷の思想に影響を受ける。

23の時に幕府打倒を企てた横浜の焼き討ち計画に参加していたが、当時京都に滞在し、最新の国内情勢に詳しかった長七郎の訴えによって計画は中止となった。その後、将軍になる前の一橋慶喜に仕え、終世にわたる厚い信頼関係を結ぶ。慶喜は間もなくして第十五代将軍に就任し、渋沢は幕臣となる。

27の時にパリ万博の使節団の一員として渡仏した。この時ヨーロッパの繁栄を形作っていた資本主義のシステムに大きな感銘を受け、帰国後29の時に日本で初めて株式会社を設立する。その後、大蔵省に入り、郵便制度や戸籍法、新貨幣など近代日本の土台を築いていった。

33で大蔵省をやめてから76まで、みずほ銀行や東京ガス、札幌ビールなど、その数500を超える会社の設立に携わった。91で直腸癌で死去。

渋沢栄一を知る上で、中田さんのYouTube動画も非常に勉強になった。動画と本書どちらも読み・見ることでグッと理解が深まる。

【渋沢栄一①】新1万円札の顔!近代日本経済の父の数奇な人生【偉人伝】

 

【論語と算盤①】〜中田敦彦史上No.1書籍!〜

 

修験者への反論

渋沢のエピソードとして、修験者との問答があるのだがこれがなかなか興味深かった。渋沢が15の時に20の姉がいたが、精神を病んでしまい、親戚の説得により修験者を招いて祈祷することになった。しかし、渋沢はこういう迷信が嫌いで修験者に質問をする。そこで修験者が回答した年数と年号が矛盾していることをつき責め立てた。

このエピソードから分かる通り、渋沢は小さい頃からこのような迷信や身分制度などおかしいと思ったことについて正論で真正面からぶつかっていたのだろう。後の出納局長との言い争いのエピソードにもあるが、討論や議論に強かったのだろう。

 

立志について

気になった本書の一文に「志を立てる要は、よくおのれを知り、身のほどを考え、それに応じてふさわしい方針を決定する以外にないのである。」とあり、自分の向き不向き、長所短所を知り、何で社会貢献するのかを悟った時が立志のタイミングだと説いている。

渋沢自身、大蔵省を4年で辞めて以来、民間のビジネスの立ち上げに注力しており、幾度にも政治の世界に戻って来ないかとの誘いもあったが断っていたという。渋沢は政治の世界は自分には向いていないと悟り、自分の得意なビジネスで大きく力を発揮したからこそ、今日の偉業へとつながっていると考える。

立志はこれを成し遂げたいと考えるより前に、自分自身について深く理解し、自分の武器を見つけた上で決めることが大切である。

 

実践ポイント

論語

本書では数多くの論語の言葉が引用される。渋沢がいかに論語を愛読していたかわかる。

論語と算盤をもっと理解するためにも論語についてもっと知る必要がある。

具体的に

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