進化しすぎた脳【池谷 裕二】 / レビュー・感想

 

進化しすぎた脳 / 池谷 裕二の詳細はこちら【Amazon】

 

本の情報

  • 進化しすぎた脳―中高生と語る「大脳生理学」の最前線
  • 池谷 裕二
  • 2007/1/19

 

概要

中高生と語る形式で大脳生理学について紹介した本書。専門用語なども出てくるが対話形式になっているため、予備知識がなくてもわかりやすく読み進めることができる。

 

【引用】個人的に気になったポイント

いつでも同じ場所に腕を移動させる神経細胞が見つかったんだ。定位置に戻す細胞。最初は腕がどこにあってもかまわない。だけどある場所を刺激すると、その直前まで腕がどこにあろうと、ある場所にきっちり移動する。

 

あるとき、ものすごい場所が見つかったんだ。そこに刺さった電極に電流が流れ刺激が加わると、ネズミはもう死ぬまでレバーを押し続ける。快感なんだ。その場所を報酬系と呼ぶようになった。

 

レバーを押したら水が出ることを知っているネズミに手術を施して、脳に電極を埋める。そしてネズミがレバーを押すという行動中の反応を検出して、それがあったらレバー関係なしに水が出るようにしておくんだ。ネズミは最初、レバーを押して水を飲んでいたけど、レバーを押さなくても、レバーを押したふり、と言うか、押そうと想像しただけで水が出る。そのことにネズミが気付くと、このネズミはレバーを押さずに念力だけで水が飲めるようになった。

 

脳の地図は脳が決めているのではなくて体が決めている、というわけだ。

 

もしかしたら人間の個性や性格、心や意識、そういったものを生んでいるのは前頭葉なんじゃないかと言われてきているんだ。

 

世界があって、それを見るために目を発達させたんじゃなくて、目ができたから世界が世界としてはじめて意味を持った。

 

自由意志というのはじつのところ潜在意識の奴隷にすぎないんだ。

 

まずは無意識で神経が活動し始めて、その無意識の神経活動が手の運動を促して「ボタンを押す」という行動を生み出すとともに、その一方でクオリア、つまり「押そう」という意識や感覚を脳に生み出しているってわけなんだ。

 

扁桃体がなくなって「こわい」という恐怖の感情が消えると、本能が剥き出しになるんだよね。ということは、「理性」というやつは、扁桃体によって形成されたものだという解釈も可能だね。言い換えると、動物には「本能」の欲求がまずあって、それが「恐怖」によってがんじがらめにした状態が「理性」ということになるかな。

 

この100個のシナプスが何をやっているかを知れば、逆に、人間の意識や心までもがわかってくるかもしれない。

 

現代では、進化のプロセス自体が進化し始めた。新しい進化法が生まれようとしている。

 

自分の生きている世界のほとんどが意識で行われていると人間は傲慢にも思っているけれども、おそらく人間の行動の大半は無意識、脳の奴隷にすぎない。

 

本書から得た気づき

ネズミの実験(報酬系)

ネズミの報酬系を刺激し続けたことでラジコンのように操作できてしまう実験があった。本書にある実験ではネズミの左右の髭の感触の脳神経を刺激することで右、左の方向を定め、報酬系を刺激することで前に進ませ、ネズミをラジコンのように動かしたという。

なんでも脳の報酬系と呼ばれる箇所を刺激することで寝食を忘れてしまうほどの快感を得てしまい、それを利用してネズミを自由自在に操ることができてしまうということである。

これは興味深いと共にとても怖い実験である。もし意図的に人間の報酬系を操作する装置を埋め込まれたとしたら、もはや自分の意思とは関係なく操られてしまうかもしれないのである。

意識とは脳が少しいじられるくらいで失ってしまい、そのくらい脆いものなのかも知れない。

 

ネズミの実験(念力)

ネズミの実験としてもう一つ興味深いものがあった。レバーを押すと水が出ることを知っているネズミの脳に電極を埋め、レバーを押す時の脳の反応を検出して水が出るようにしたら、なんとレバーを押すと想像しただけで水を出すようになったのである。

これはいわば念力によって操ったことになる。もちろんネズミの脳に電極を埋め、それを検出して水を出すという人間の手を加えたことによるものだが、念じるということで確かにその脳波が放出され、どういった意図の脳波なのかわかるということである。

技術が進歩して意図した脳波を検出できるようになれば、想像するだけで電気がついたり、トイレを流したりできるようになるのかもしれない。さらに想像していること、思っていることなどを特定されることも考えられる。

念じることのパワーと凄さに気付くとともに、その怖さも知ることができた。

 

人間に自由意志はほとんどないということ

本書で特に印象的だったのは、人間の自由意志というのは潜在意識の奴隷にすぎないということである。

何かを選択したり行動していることは自分の意思で決めたことだと思っていたが、実は無意識の神経活動によって体、意識という順に働いてたとなると、どの環境に身を置くのかが重要であると感じた。

よく環境が大事というが、脳科学的にも納得できる。人間の自由意志はほとんどないのであれば、自分のなりたい姿ややりたいことができる環境に移ることが必要なのかも知れない。

脳科学を学び特性を理解した上で、それに沿って仕組み化することが、ある意味で意識的に行うことの効果的な方法なのかもしれない。

 

実践ポイント

脳の不思議

本書を通して脳についての理解が進めと共に一体どうやって脳ができ、意識が生まれているのかますます不思議になった。科学的な事を知れば知るほど、むしろ神や精神的なスピリチュアルなことがあるような気もしてくる。

また、生物の意思や意識など、どうにも曖昧で複雑な概念は進歩した脳科学でプロセスはわかり始めたけど、その深部は不思議なことがたくさんあるようである。より脳科学について学びたいと思った。

具体的に

脳科学に関する本を読む

 

進化しすぎた脳 / 池谷 裕二の詳細はこちら【Amazon】

コメント

タイトルとURLをコピーしました