無とは何か【ニュートンプレス】 / レビュー・感想

 

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本の情報

  • Newton別冊『無とは何か』
  • ニュートンプレス
  • 2020/1/17

 

概要

現代物理学によると、真空はただの「からっぽの空間」ではなく、空間から物質をすべて取り除いても、そこには奇妙なものたちが満ちあふれているという。

無の探究とともに進化してきた現代物理学の解説もまじえながら「無」のおどろくべき正体にせまる。

 

【引用】個人的に気になったポイント

原子核からその周囲をまわる電子はでの距離が原子の半径であると考えると,水素原子の大きさ(直径)は、0.1ナノメートルほどだ。そして,その中心にある原子核(陽子)の直径は、その10万分の1ほどしかない。体積を考えると,原子核が原子の中で占める割合は全体の1000兆分の1ほどしかないのだ。また電子は、その大きさがゼロだと考えられている。こうして考えると,分子どうしの間の空間だけでなく、原子の構造そのものを見ても,その中身はほとんどからっぽだといえるのだ。あらゆる物質は原子でできているので空気であろうと,液体の水であろうと,さらには固体の氷や鉄のような物質であろうと,実際には“無”と大差がないといえる。

 

多世界解釈では、共存していた一つの状態が観測されたあとでも、二つの状態とも残っていると考える。検出器が放射線を検出すると、「原子核の崩壊を検出した世界」と「原子核の崩壊が検出されていない世界」が分岐する,と考えるのだ。放射線の検出前は、「原子核が崩壊した世界」と「原子核が崩壊していない世界」は共存し,干渉し合っている。しかし検出した後,二つの世界は、干渉し合うことができなくなり,関係性が切れてしまう。これを「世界が分岐した」という。この場合,関係は切れているが,二つの世界は並列しているようにみなせるので,「多世界解釈」よばれている。多世界解釈でいう「世界」とは,原子核や観測装置だけでなく、人間や宇宙に存在するあらゆるものを含めたものだ。多世界解釈では、時々刻々と世界が無数のパラレルワールド(平行世界)に分岐していく,と考えるわけだ。多世界解釈は非常に大胆な考えであるが、コペンハーゲン解釈がうまく説明できない「状態の消失」の問題をうまく回避しており、理論的にも矛盾のない解釈になっている。

 

ゆらぎによって真空は“完全なる真空”ではいられず,ある瞬間に粒子と反粒子(もとの粒子と電荷などの正負が反対で、質量などのほかの性質が同じである極子)のペアが生じて(対生成),すぐに消える(対消滅),ということがたえずおきているというのだ。

 

このように,真空はごく一瞬だけあらわれては消える無数の粒子と反粒子でわきたっている。これが現代物理学がたどりついた真空の姿なのだ。

 

自然界の最小部品は「素粒子」とよばれ,現在の物理学では、あらゆる素粒子は、大きさゼロの「点」だと考えられている。よく知られた素粒子には,電流の担い手である「電子」がある。ほかにも光の素粒子である「光子」,原子核を形づくっている「クォーク」など,約20種類の存在が知られている。さらには、未発見の素粒子もまだたくさんあると考えられている。

 

超ひも理論によると,どの素粒子を拡大しても,同じひもがあらわれるという。ひもとは、太さはゼロだが,長さだけはもつものである。ただし,素粒子の種類によって、ひものゆれかた(振動のしかた)などがことなっているとされる。バイオリンなどの弦楽器では、弦のゆらしかたをかえると,多様な音色を生みだせるが,それと似ている。ひもは小さすぎて振動の様子が見えないため、私たちには多様な素粒子が存在しているように見えている、というわけだ。

 

バイオリンの振動は肉眼ではとらえきれないほど速く1秒間に数百回(102回程度)も振動している。一方,ひもは、何と1秒間に100兆回の100兆倍のさらに100兆倍(10~2回程度)も振動しているという。しかもひもの端は、自然界の最高速度である光速(秒速30万キロメートル。1秒間で地球を7周半する速度に相当)で運動したりもするというから、おどろきだ。

 

ホログラフィー原理をもとにした仮説によると,この宇宙は、2次元平面上に“書かれた”情報から“投影”されたものである可能性があるという。さらに,空間さえもより根源的な“何か”からできた幻かもしれないというのだ。

 

空間や時間を含めて,私たちが認識している宇宙が幻であるならば,宇宙のはじまりとは何のことを意味するのだろうか。空間すら存在しない「無」を,私たちはどうとらえたらよいのだろうか。最先端の物理学が宇宙の“ほんとうの姿”を明らかにするとき、「究極の無」にせまることができるのかもしれない。

本書から得た気づき

実はスカスカ

原子できているあらゆる物質、空気や液体、固体などミクロの世界で見ると実はスカスカである。

原子の原子核とその周りにある電子の間には大きな空間があり、原子核をサッカーボールに例えると電子までの距離は飛行機が飛ぶ高度(10キロメートル)もある。原子核と電子の間にはそれほどの空間があるとは驚きである。

あらゆる物質ということは人間の体も地球も同じで、例えば宇宙から降り注がれてくるニュートリノは通り抜けているのである。ちなみに前に読んだ本に書いてあったが、ニュートリノは一生のうち何個かは人間の体に当たるらしい。

 

宇宙は生成、消滅を繰り返していた

何もないはずの真空中でも、2つの粒子がペアになって生まれたかとも思えば(対生成)、すぐに消滅する(対消滅)ことが起こっている。

これは宇宙誕生時にも起こっていたようで、宇宙の大きさがとてつもなく小さい時には宇宙の存在自体揺らいでおり、宇宙自体が生成、消滅を繰り返していたという。

生成し、すぐに消えていく無数の宇宙の卵の中から凄まじい勢いで膨張し始めるものが現れ、それが今の宇宙になったという。これはエネルギーの山を超える「トンネル効果」によって儚い運命の宇宙から急膨張する宇宙に転じて生じたとされている。

 

次元は丸め込まれている

ひも理論は9次元で考えると成り立つと言うが、3次元で生きる人間には9次元の世界は想像もできない。このことは本書でマットレスは人間にとって2次元しか移動できないが、小さな虫にとってはマットレス上の毛玉の上を3次元に移動できると例えていた。

このように次元というのは小さく折り畳められており、人間が知覚できない次元がミクロの世界では無数に折り畳まれているのだろう。

 

ひもの振動

本書でひもの振動は1秒間に100兆回の100兆倍のさらに100兆倍も振動し、ひもの端は光速(1秒間で地球を7周半する速度に相当)で運動するという。

このゆらぎによって電子や光子、クォークなどの多様な素粒子が存在しているとされている。ということは素粒子は最小の単位であるため、万物はこのひも揺らぎにすぎないと考えると世界の見え方が変わってくる。

ひも理論は知れば知るほど面白い。ひも理論についてもっと深く知り、これからも動向を注視していきたい。

 

実践ポイント

ヒッグス粒子

本書を読んで新しくヒッグス粒子について知ることができた。今まで知らなかったのでこれを機にヒッグス粒子について学んでいく。

具体的に

ヒッグス粒子についての本を読む

 

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